フラダンスは、ハワイの伝統文化の中核を成す古くからの踊りであり、ハワイの歴史や文化を伝承する重要な役割を果たしてきました。フラは神々への崇拝の踊りとして始まり、文字を持たなかったハワイの人々が歴史や出来事、神話を次世代に伝えるために踊ってきたのです。フラには、古典的な「フラ・カヒコ」と現代的な「フラ・アウアナ」の2種類があります。フラ・カヒコは神に捧げる宗教的な踊りであり、男性のみが踊ることを許されていました。一方、フラ・アウアナは、1950年代以降に広まった男女が自由に楽しむスタイルです。
19世紀にキリスト教化の影響でフラは一時禁止されましたが、20世紀に入り文化復興運動の一環として再興され、現代でもハワイ文化のアイデンティティとして大切に継承されています。また、世界中で愛されるダンスとなり、ハワイ文化の国際的な親善大使的な役割も果たしています。
フラダンスの演出やコスチュームには、ハワイの自然や文化が色濃く反映されています。振り付けには、波や風、花などの自然の動きが表現され、手の動きには物語や歴史が込められています。伴奏には伝統的な楽器が用いられます。女性は華やかなムームウやパウを着用し、衣装の模様にはハワイの花や植物がデザインされています。男性は伝統的にマロを着用していました。舞台の背景にはハワイの自然が描かれ、照明はハワイの光景を再現するなど、演出やコスチュームには、ハワイの自然美や文化的シンボルが色濃く取り入れられているのです。
例えば、「フラ・カヒコ」では、女神ペレの火山の踊りや、神々への讃歌が踊られてきました。踊り手は神聖な儀式の一部として、神々に祈りを捧げるように踊ります。衣装も伝統的なものが用いられ、男性はマロ、女性はパウを着用します。一方、現代的な「フラ・アウアナ」では、ハワイの美しい自然や、愛する人への思いを表現するような踊りが多く踊られます。衣装も華やかなムームウが着用され、レイが飾られます。舞台の背景には、ハワイの美しいビーチや滝などが描かれることが多くあります。
このように、フラダンスはハワイの歴史や文化、宗教的信仰を体現する重要な役割を担ってきた芸術であり、今日でもハワイのアイデンティティを象徴する存在となっています。そして、その演出やコスチュームには、ハワイの自然美や文化的シンボルが色濃く反映されているのです。